知恵の集積地・京都

五感を刺激し、独創的な思考を生み出す街「京都」

京都の強みのひとつである「知恵」。
どのような環境が、京都を知恵の集積地にしたのでしょうか?
そして、その知恵の集積は、京都に拠点を置く上で、どのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか?
京都大学の理事として産官学連携に携わっている阿曽沼慎司さんに、お話を伺いました。

知恵の集積地・京都

Shinji ASONUMA / EXECUTIVE VICE PRESIDENT,INDUSTRY-GOVERNMENT-ACADEMIA COLLABORATION,KYOTO UNIVERSITY

京都が知恵の集積地となった背景。 それには3つの理由、言い換えれば京都の特殊性があると思います。

一つ目は、京都の自然環境です。京都は三方を山に囲まれた盆地で、四季がはっきりしておりとても日本らしい。そういう風土が、この地に住む人々の繊細な感覚を育んできたのだと思います。

二つ目は、京都の持つ歴史です。1000年以上に亘って都が置かれ、日本の中心地でした。京都には新しいことにチャレンジする気質が脈々とあって、国が手がける前に町の人が自前で小学校を作ったり、日本で初めての電車を走らせたりしました。その時々の権力者に左右されず、自由な精神でやるべきことを自主的にやるという意識が高いのでそういった気風は、さまざまな分野において、洗練された文化を花開かせ、住む人々の五感を刺激することにも繋がっています。

三つ目は世界でも有数の宗教都市であることです。京都には神社仏閣が非常にたくさんあります。宗教都市には、普遍性の追求や抽象的な思考概念が息づいています。そして洗練された感受性の世界と、知的で論理的な思考の世界が共存しています。

このように歴史・文化・宗教が独特の風土の上に重層的に堆積している京都では、いろいろな要素が混ざり合うことで独特の感覚が生まれ、独創的な思考が生み出されてきました。ノーベル賞やフィールズ賞の受賞者が多数出ているのも、そういった京都の持つ土地の力がベースになっているのは間違いないと思います。

今を生きる学術文化研究都市・京都

2015年に、京都大学の吉田キャンパス内に、京都大学国際科学イノベーション棟が完成しました。京都大学産官学連携本部をはじめ、国内外の教育研究機関、京都府や京都市などの公的機関、企業や団体など、産官学連携に携わる組織が、ひとつ屋根の下に集まり交流を図ることによって、京都大学の持つ「知」を源泉とした新たな価値の創造を目指しています。

従来の産学連携では、特定の研究室と企業が協同研究を行うというのが一般的でしたが、どういう研究が一緒にできるかという段階から一緒に考える、企業との包括連携も進めています。
経済状況はじめ、不透明感の強い世の中において、今後も大学と企業が組織対組織で一緒になって役割分担を考えていくケースは増えると思われます。

京都は歴史のみを見に来る観光都市ではなく、学術文化研究都市として今を生きている都市です。京都大学は、京都という土地の力を借りながら、これからもチャレンジングな大学でありたいと考えています。是非、産官学の交流の場として活用ください。

京都にゆかりのあるノーベル賞受賞者

  • 湯川 秀樹1949 物理学賞
  • 朝永 振一郎1965 物理学賞
  • 江崎 玲於奈1973 物理学賞
  • 福井 謙一1981 化学賞
  • 利根川 進1987 生理学・医学賞
  • 野依 良治2001 化学賞
  • 田中 耕一2002 化学賞
  • 小林 誠2008 物理学賞
  • 益川 敏英2008 物理学賞
  • 下村 脩2008 化学賞
  • 山中 伸弥2012 生理学・医学賞
  • 赤﨑 勇2014 物理学賞
  • 大隅 良典2016 生理学・医学賞
  • 本庶 佑2018 生理学・医学賞
  • 吉野 彰2019 化学賞

refference information

最先端の研究成果を創造する京都の大学

  • 京都大学・京都府立大学など国公立大学7、
    私立大学41
  • 人口10万人あたり6千人の学生(密度日本一)
  • 5千人の理系学生が毎年卒業
  • 留学生7千人
  • 京都全体が大学のキャンパス

京都大学iPS細胞研究所 CiRA

  • 2012年にノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が所長を務めるiPS細胞技術の先駆的な中核研究機関
  • iPS細胞の医療応用の実現を目指し、幅広い研究活動を実施

京都大学国際科学イノベーション棟

  • 2015年に京都大学の吉田キャンパス内に設置されたイノベーション施設
  • 京都大学と国内外の企業や公的な団体などの交流による新たな知と価値を創造

-京都の3つの強み-伝統|[智恵]|革新

写真提供(協力)/ 使用許諾:京都大学